ふたりの距離の概算

正しく問うためには正しく理解しなくてはならない

走るのは怖いことだ。頭の中が空になる。これまで思い出してきた事実も、組み上げてきた考えも、すべて脳の中から溶け出していくような感じがする。無心になるのが楽しいという境地はわかるが、いまは全部を憶えておかなければならない。それなのに走ってしまった。コップから水がこぼれるように、何かを忘れてしまわなかっただろうか。落ち着くべきだとわかっているけれど、走る足は止まらない。長距離走らしく短い息を吐き、小刻みに腕を振る。

遠まわりする雛

「じゃあ、ちーちゃんは怒ることも悪くないって思ってるの」 「そうですね。どんなことにも怒れないとしたらたぶん、何も好きになれないんじゃないでしょうか」  ……俺は怒れるぞ。 「そう思ってるなら、ちーちゃんが怒らないのは、なんで?」  即答だった。 「疲れるからです。疲れることはしたくありません」

クドリャフカの順番

「長い付き合いにならないことが予想される場合、相手は十中八九、やらずぶったくりを考える。仮に考えなかったとしても、必ず、自分の労力を最少にしようとする。だから、見返りを用意した場合は、相手が自分が頼んだだけの仕事をしてくれるとは思わず、日程と作業量に充分な余裕を持たせる。相手が動かなかった場合のことも考えて予備の計画を用意しなくてはならない。それが嫌なら、相手にもリスクを負わせることだ。

「私は、お前が自助しようとする人間だと知っている。私の目が曇ってなければだが。  だが、お前がああやって『期待』を操ろうとすると、どうもいけない。お前の話し方、お前の物腰であれをやろうとすると、どうにも甘えているように聞こえる。頼られていると誤解させるのは非常に有効だ。だが、甘えられていると誤解されるのは、長期的にどころか、短期的にもリスクが大きすぎる」

愚者のエンドロール

愚者のエンドロール <古典部>シリーズ (角川文庫)

愚者のエンドロール <古典部>シリーズ (角川文庫)

「言わなかったっけ、僕は福部里志に才能がないことを知っているって。例えば僕はホームジストに憧れる。でも、僕はそれにはなれないんだ。僕には、深遠なる知識の迷宮にとことん分け入っていこうという気概が決定的に欠けている。もし摩耶花がホームズに興味を傾ければ、保証してもいい、三ヶ月で僕は抜かれるね。いろんなジャンルの玄関先をちょっと覗いて、パンフレットにスタンプを押してまわる。それが僕にできるせいぜいのことさ。第一人者にはなれないよ」

白ゆき姫殺人事件

映画『白ゆき姫殺人事件』オフィシャルサイト 2014年3月29日公開!

この人は真の顔はこういう人だから(犯罪してもしょうがない)みたいなのを仮定の話でテレビとかインターネットで盛り上がるのが嫌いなので、イライラしながら見てた。 けどイライラしてるわりに話は面白かったのと井上真央が可愛かった。

氷菓

氷菓 <古典部>シリーズ (角川文庫)

氷菓 <古典部>シリーズ (角川文庫)

……そうとも。俺は省エネの奉太郎。自分がしなくてもいいことはしないのだ。  だったら、他人がしなければいけないことを手伝うのは、少しもおかしくはないんじゃないか?

全ては主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典になっていく。  いつの日か、現在の私たちも、未来の誰かの古典になるのだろう