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迷宮百年の睡魔

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迷宮百年の睡魔 (新潮文庫)

迷宮百年の睡魔 (新潮文庫)

自殺することと、自殺なんてしないと決めることは、どちらも危険回避という点で同値だし、同じ結論だ、と僕には思える。僕が自殺しない理由は、ここにある。あんなことがあったのに、僕が生きていられる理由は、つまり、死ぬことができない理由は、そういうことだ。死を選ぶなんて結論は、僕には単純すぎる。我慢できないほど、単純すぎる。

知ってしまったあとに満足できるとは思えない。知りたい、と今思っている、この状態が、なにかを忘れさせてくれる。知りたい知りたい、と遠くどこかへ向かっていれば、身近な周囲に視線を向けなくても済む。後ろを振り返らなくても良い。それが、僕を生かしてくれている。

「いずれ、答が導き出せるかもしれません。科学的に説明ができないものは実在しません。今は不思議でも、いずれは明らかになります。不思議とはつまり、将来の理解への予感ですね」