女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN

女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN (新潮文庫)

女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN (新潮文庫)

少なくとも、僕の人生で、これはとても大きなウエイトを占める事件となった。自分の両親や子供を商品のように選択することはできない。人生のほとんどは、選択できないもので占められている。それが運命というものの定義。それなのに、どうして、幸運だとか不運だとかいった判定をしてしまうのだろう。無意味ではないか。取り替えのできないものに対して、良し悪しを識別したところで、何も生まれない。何の方法もない。

でも、ロイディは僕の横、三メートルほどの距離に立って、黙っていた。この距離は、僕が指定したものなので、ロイディの意向ではない。二人が同時に両手を振り回したり、足を蹴り上げて、突然カンフーの練習を始めても大丈夫な間合いだ。正直にいうと、この無愛想な距離が僕は好きだし、こんなとき、何もきいてくれない薄情な友達がたまらなく大好きだ。