魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge Vシリーズ

ガラスのドアが静かに開き、香具山紫子は生協購買部の建物の中へ足を踏み入れた。自動ドアの前では、いつも一瞬だけ立ち止まらなければならない。つまりペースを乱される。もしも自分が王様だったら、家来がもっと早いタイミングでドアを開けてくれるはずなのだ。つまり、自動ドアという代物は、「お前は王様じゃないぞ」と気づかせるために、わざとこんなにのろまな動作をするように設計されているとしか思えない

「そうですか。あんなものどうして、わざわざ作るんだろうって思いません? 好き好んで乗る連中の気が知れない」 「たまには人生、振り回されてみたいものなんだ」七夏は呟いた

関根さんは、他の人の絵を見ないから、絵の歴史も、現在の動向も、まるで知らないの。自分以外の絵に対する興味を既に失っていたわ。つまり、自分と社会のギャップを理解しようとさえしないんですよ。もちろん、それが天才なのかもしれませんけれど……。