虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

「ことばは、人間が生存適応の過程で獲得した進化の産物よ。人間という種の進化は、個体が生存のために、他の存在と自らを比較してシミュレートする──つまり、予想する、という思考を可能にしたの。情報を個体間で比較するために、自分と他人、つまり自我というものが発生した。

すべての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在するんだよ。資本主義を生み出したのは、仕事に打ちこみ貯蓄を良しとするプロテスタンティズムだ。つまり、仕事とは宗教なのだよ。信仰の度合において、そこに明確な違いはない。そのことにみんな薄々気がついてはいるようだがね。誰もそれを直視したくはない」

自由とは、選ぶことができるということだ。できることの可能性を捨てて、それを「わたし」の名のもとに選択するということだ。