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朽ちる散る落ちる Rot off and Drop away (Vシリーズ)

book

この巻わりと面白かった。

「客観というのはね、つまり主観の裏返しなんです。客観だけで存在するものではありません。主観があって、初めて体現できる感覚なの。したがって、思いっきり主観的な情報入力を通してこそ、私たちの視点は高く駆け上ることができる、というわけ。ほら、ジャンプするときだって、まず膝を折って、一度は小さくなるでしょう?」

「けれど、ときどき怒ってみるのも、これ、人間の機能としては適度な潤滑というのでしょうか、健康のためにも良いかもしれません。血管に圧力をかけるわけですから、配水管の掃除みたいなもの、ともいえます」 「そうか。うん、しかし、それでコロッと逝ってしまう奴もおるからな。結局、土井君には会えんかったわけだ、残念だったね」

とにかく、長く生きすぎた。若いときに研究から得た興奮を、そして満足を、その輝かしい時間を、きっとまた摑める、その片鱗にでも良いから再会したい、と望んで後半の人生をなんとか生き延びてきた。だがついに、そんなものはなかった。結局、老いるということは、すなわち、そういう無駄骨なのだろう。情けないことである