恋恋蓮歩の演習 A Sea of Deceits (Vシリーズ)
恋恋蓮歩の演習 A Sea of Deceits Vシリーズ (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Kindle版
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海の上でただ独り、小舟で浮かんでいたとしても、孤独が味わえるかどうかは疑わしい。たとえば私の場合、孤独の信号を感じるときというのは、身近に大勢の人間たちがいる、そんな状況がほとんどなのだ。
いつの間に眠ってしまったのだろう。 だんだん怒りが込み上げてきた。 なんということ! また、眠ってしまったのだ。 コンタクトはどうしたんだろう? ビールなんか飲むからいけない。 金輪際、アルコールは飲まないことにしよう。 でも、お酒を飲まないと、ここに残る言い訳が見つからなかった。保呂草のビールにつき合っていれば、帰れとは言われない、と考えたのだ。 浅はかだった。 しかたがない、それは、たぶんしかたがない。 しかし、こうならないように、ちゃんとセーブして飲んでいたはずなのに……。
「そうだね、小鳥遊君は向いていると思う。だけどね、医者だって同じじゃないかな。直すように見えるけど、結局、悪いところを見つけて、取り除いているだけじゃない? 治る力は、もともと患者が持っていた能力だよね。社会が良くなるのも社会の力だし。人と人の関係が修復するのも、その人たちの能力によるしかないんだ。周りのものは、悪い部分を指摘することしかできない」