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数奇にして模型 NUMERICAL MODELS S&M

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また、「クリエータ」にしても、広義に捉えれば、人間のあらゆる職業はクリエータだし、逆に狭義に捉えれば、そもそも職業として成り立たない行為に他ならない、と犀川は考えていた。おそらく、その両者の間で中途半端な位置を維持することが、「有名なクリエータ」になる必要条件だろう

製作に長時間をかけること自体にも、模型、いえ、創作すべての理由があるわけよ。ああ、だから、ここで、最初の動機から既に少し外れている、違うんだってことになるわね。所有欲が中心的な動機かというと、やっぱりそれは違うわ。だってね、模型が完成してしまうと、もうずいぶん醒めてきてね、飽きてしまうわけよ。これって、矛盾しているでしょう? 完成してしまったものでは満足できないんだから。たとえ完成品を眺めていても、やっぱり作っていたときの時間というか、そのときの感触を思い出す、ある意味で、それだけの機能しか、完成したものにはもう残っていないの。結局、作っている最中にだけ所有できる実感がある、ということ。どう? わかるかしら?」

人の印象とは不思議である。生理的に受けつけないと思っていた人物が、多少、予想と異なる仕草をしただけで、好意的に見えることがある。この正反対の事例も多い。そんな瞬間というのは、まるで、ポジフィルムがネガフィルムに反転するように基準が入れ替る。