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ふたりの距離の概算

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正しく問うためには正しく理解しなくてはならない

走るのは怖いことだ。頭の中が空になる。これまで思い出してきた事実も、組み上げてきた考えも、すべて脳の中から溶け出していくような感じがする。無心になるのが楽しいという境地はわかるが、いまは全部を憶えておかなければならない。それなのに走ってしまった。コップから水がこぼれるように、何かを忘れてしまわなかっただろうか。落ち着くべきだとわかっているけれど、走る足は止まらない。長距離走らしく短い息を吐き、小刻みに腕を振る。